8/31
のら猫ととんび

小さな漁港の
海へとつづく
狭い路地に
人なつっこい
二匹の
のら猫がいた

僕は
チロと
なんだようと言う
名前を付けた

チロと
なんだようは
いっつも
ペロペロ
毛づくろい

それを
見ていた
とんびが
電信柱の
てっぺんで
ピィヒョロロ〜と
笑ってた

 

 

 

8/30
帰れる場所

もう
二十何年も
僕らは
海に
帰っていった

そして
これからも
この先も
ずぅっと
僕らは
海に
帰っていくだろう

そこが
僕らの
落ち着く
場所だから

そこが
風たちの
唯一の
帰れる場所だから

 

 

 

 

 

 

8/29
海の稲穂

夕日に
照らされて
黄金の稲穂色に
輝いた
誰もいない
海の中

僕は
この地平線を
独り占めできて
幸せだった

その時
あぁこの星は
こんなにも
でっかいのかと
ちっぽけな
僕は想った

気が付くと
僕は
一本の稲穂になって
海の中で
こうべを
垂れていた

 

 

 

 

 

8/28
聖地

土曜の夜中に出発して
国道をひたすら
海へ海へと
進んでいって

真夜中の
コンビニの駐車場で
満天の星々に
見守られながら
ラーメンとおにぎりを
ほほばって
車の中で
日の出まで仮眠し

朝日と友に
僕らは
地平線を眺めた

足跡一つ
付いていない
海岸は
僕らの聖地で

朝靄の中
遙か沖からやってくる
波たちは
ズドォン
ズドォンっと
五臓六腑に響き渡って
圧倒的な力強さで
無言の僕らを
迎え入れてくれた

僕らは
海に入れる
うれしさや
幸せだけを
噛みしめて
波に向かっていった

僕らは
少年から
大人になるために
大きな波に
向かっていった

 

 

 

 

 

8/27
夏の嵐

失恋の想い出も
暮れゆく
夏の想い出も
一緒だった

恋愛は
夏の終わりの
嵐のように
ざぁっと
僕の前を
通り過ぎていった

それでも
嵐の後の
爽快感のような
そんな
清々しさも
残っていた

僕らは
何個もの
嵐に
どしゃぶりに
なりながら

少年から
男になっていった

 

 

 

 

8/26
砂の下

夏が
終わっていくのと
歩調を合わせるように
この恋も
終わっていった

秋はかけ足で
やって来て
僕の左側には
もう誰も
いなくなっていた

あれは
夏の日の
蜃気楼だったのか

夏の海は
人も心も
何もかも
輝かせて
見せてくれたが

まるで魔法が
とけるように
一夜にして
海の家も
人々の姿も
消してしまった

砂浜の砂は
全てを覆い隠して
想い出すらも
もう砂の下に
埋もれていた

砂浜は
こんなにも
広かったのかと
始めて知った

 

 

 

 

8/25
夏の日々

僕らは
この輝きの
中だけで
生きたいと想った

そんなことは
できやしないのに
人間は
幻想の中では
生きていけないのに

わかっているのに
それでも
かまわないと想った

この夏の日々が
あんまりにも
輝いて
見えたから

でも
僕らの
時間は
止まってくれなかった

 

 

 

 

8/24
でっかい

いつだって
僕らは
一生懸命だった

一生懸命
遊んで
一生懸命
笑って
この大切な一瞬を
一生懸命
輝かせて
生きたかった

海には
汚染すら
浄化してしまう
もの凄い力があるから

僕らなんか
簡単に
生き返らせてくれた

海は
でっかかった
どこまでも
どこまでも
すげぇ
でっかっかた

 

 

 

 

8/23
輝き

輝きは
一瞬ってことは
わかっている
つもりなのに
それでも
僕らは
そこに
向かっていた

輝く
キラメキに

恋も
喜びも
もしかして
人生も
はなかい一瞬の
輝きかもしれないのに

それでも
僕らは
輝きに
向かっていった

幻だって
幻想だって
一瞬だって
かまわなかった

僕らは
この一瞬の
感動に
生きたかった

 

 

 

 

8/22
夕日

見渡せば
大海原は
どこまでも
どこまでも
キラキラと
輝いていて

この感動と
同じくらいに
僕らの
未来も
どこまでも
どこまでも
輝いていると
信じたい

大きな嵐が
過ぎ去った後は
優しいなぎになって
傷ついた心を
そっと
いやしてくれると
信じたい

そして
いつの日か
夕日が
西の地平線に
ゆっくりと
沈んでいくように

僕らも
想い残すことなく
優しく
微笑んで
沈んでいきたい

また
昇って
来る日まで

 

 

 

 

8/21

僕らは
向こうから
やって来る
大きな波に
自分の夢を
重ね合わせて
乗ろうとしていた

必ず
あの夢に
乗れるんだ

頭の中で
そうイメージして
僕らは
波の形をした
夢に向かっていった

だけど
現実は無常で
夢の後味は
しょっぱかった

それでも
僕らは
諦めなかった

あの夢に
乗れるまで
何度も
何度も
チャレンジした

 

 

 

 

8/20
太陽と海

ほら
ごらん
水平線から
太陽が
昇って来たよ

僕らは
無言で
語り合っていた

何色にも
重なり合った
奇蹟の色彩は
どんな写真にも
現すことができなくて

太陽の形を借りた
圧倒的な感動が
ぐんぐん
ぐんぐん
昇って来た

僕らは
黙って
あの希望を
眺めていた

太陽と

僕らの
前には
その二つしか
なかった

 

 

 

 

 

 

8/19
約束の地

僕らが
大人になっても
あの場所へと
また
帰って行こう

キラキラと
きらめいた
あの約束の地へと
また
導かれよう

何一つ
同じ波は
やって来ないで
何一つ
同じ風も
通りすぎなかった
あの蒼き
約束の地へ

いつだって
海へとつづく
小路から
漂ってくる
潮の香りは
一緒で

狭き小路を
抜けると
広大に広がっている
海の景色も
一緒で

わくわくしている
僕らの
心と身体を
圧倒的なスケールで
包み込んでくれた
あの約束の地

大人になっても
いつまでも
この気持ちを
忘れないで
遠くの波を
眺めよう

背中は
いつまでも
あの時の
少年のままで
大きな夢を
眺めよう

 

 

 

 

 

8/18
最後の夏

最後の夏の日は
風のように
すぅっと
僕らの前を
通り過ぎてゆき

冷たくなった
海水だけが
夏の終わりを
無言で伝えていた

冷たくなった
海水に入りながら
沈んでゆく
夕日を眺めていると

あぁ本当に
今年も
終わってしまうんだなぁっと
寂しくなっていく

だけど
毎年味わう
このもの悲しい感覚も
またたまらなく
好きだったりして

渋滞もなくなった
帰り道
いつもより速く感じる
都会の車たちや
潮の香りもしない
乾いた空気だけが

まだ
夢の世界から
目覚めきれていない
僕らを
強引に現実の世界へと
引き戻そうとしていた

僕ちは
その力に
少しでも抵抗しようと
いつもより
遠回りして
家路に帰った

 

 

 

 

8/17
茶碗

お盆の中の
茶碗を
テーブルの上に
ちょこんと置いた

茶碗が
ふぅと
大きな
大きな
深呼吸をついた

うわぁっと
両手を
思いっきり
広げて
背伸びをした

なんだか
茶碗の
ご飯も
うまくなった

 

 

 

8/16

七色なんて
せこいこと
言わずに
大切な人の
数の分だけ
大空に
虹の絵を描こうよ

大切な人のことを
想いながら
何色も
何十色も
大空に
虹をかけようよ

その虹は
きっと
君が想った
人の心まで
かかっているよ

 

 

 

 

 

 

 

8/15
せみ

何年も
何年も
土の中で
じっと耐えて
苦労して
下積みして

だけど
人生の後半は
ミンミン
ミンミン
ミンミン鳴いて
花を咲かせるんだぁ

そんでもって
悔いもなく
未練もなく
潔く
パッと散る

そんな
せみに
なるんだぁ

 

 

 

 

 

 

8/14
池の鯉

こいこいこい
ほら
こいこい

お前は
パンを
くっただろ
向こうの
お前は
くわんのか

こいこいこい
はよ
こいこい

勇気をだして
はよ
こいこい

 

 

 

 

 

8/13
銀河路線

山の中にある
廃線跡を
歩いて行こうよ

田んぼと
田んぼの
間にある
廃線跡を
歩いて行こうよ

今はもう
通っていない
軽便鉄道の
線路に
耳を当ててごらん

ほら
銀河の音が
聴こえるよ

 

 

 

 

 

8/12
晴れの日

あぁ
いいなぁ

気持ち
いいなぁ

ふとんも
ニコニコ
笑ってらぁ

 

 

 

 

8/11
ちんちんちん

くるのか
こんのか
わからん
ちんちん
小湊鉄道

無人の駅の
たんぽぽさんも
線路のわきで
笑ってらぁ

ちんちんちん
遠くの
お山の方からは
もうすぐ
くっぺと

踏切キリキリ
歌ってらぁ

 

 

 

 

8/10

せっかく
風をつかむ
チャンスはあったのに

他人の
漁夫の利だけを
狙った
ネガティブな
気持ちしかないから

風も指の間から
スルーと
抜けていってしまう

私は
そんな人間に
なりたくない

 

 

 

 

 

 

8/9
ネジ

人間は
ネジではない

ネジに
心はない
意志もない

ただネジは
わざと良心を
無くした
ふりなどしない

人間は
自らの良心を
立ち入り禁止に
押し込んで
ネジのふりをする

 

 

 

 

 

 

8/8
同線二人

故郷へと帰る
夜行列車の
窓際に
いっこの
みかんを置いた

上野の駅で
買った
冷凍みかんを
ちょこんと置いた

ゆっくりと
皮をむいて
半分は
お母さん
半分は

僕たちは
一緒に
旅に出ていた

 

 

 

 

 

8/7
赤い星

大曲までの
夜行列車は
哀しく長く

ときおり
通り過ぎてゆく
踏切の音が
余計に
哀しく感じさせた

小さな木箱を
抱えた僕は
一睡もできず
ただ見るともなく
故郷への道を
眺めていた

みかんを持った
少女が
こんな形で
故郷に
帰って来るなんて

夢とか
希望とか
可能性とか
見えないもの
いっぱい抱えて
やって来た
少女が
こんな形になって
帰るなんて

カンカンカーン
真っ赤な目をした
踏切が
また一つ
銀河と田んぼの
境目もなくなった
真っ暗な闇に
消えていった

ポツンと
一つ
消えて逝った

 

 

 

 

8/6
眼鏡

お母さんが
眼鏡をかけた
始めてかけた

僕は
眼鏡かけたのと
聞くこともできず
なにげない
日常を装っていた

でも
心の中では
少し動揺していた

あぁ
お母さんも
年をとるんだなぁと
想った

お母さんの
後ろ姿を見て
僕は
守ってあげたいと
想った

なんだか
そぅ
想った

 

 

 

 

8/5
お土産

どんなに
高い山に登っても
そちらは
見えませんが

そちからは
僕が見えるように
今はマッチ箱のような
ビルの谷間の中に
埋もれている
豆粒ぐらいの僕が

どんどん
どんどん
大きく見えるように
志を果たしたい

あなたの
息子は絶対に
諦めませんよと
夢を果たしたい

そして
いつの日か
虹の階段を
天国に掲げて
とんとんとんって
迎えにいって

感動のお土産を
両手に
いっぱい
いっぱい
いっぱい抱えて

お母さんを
喜ばせたい

 

 

 

 

8/4
夕暮れ

今よりも
夕焼けが
もっと
もっと
大きく見えた頃

大きな
夕焼けは
小さな公園を
赤とんぼ色に
染めていた

そんな影が
長くなる頃になると
きまって
お母さんは
呼びに来てくれていた

僕は
呼んでもらえる
その声に
大きくて
やさしくて
あぁ
守ってもらって
いるんだなぁと想える
愛を
感じていた

あれから
いくつ
夕日が落ちたのだろう
今でも実家の前には
小さな公園はある

ジャングルジムも
すべり台も
新しくペンキを
塗ってもらって
きれいに
おめかししているけど

僕の心の中は
今でも
あの時の
赤とんぼ色
一色で

あの時の
天使の声も
そのままだった

「よっちゃん
 ごはんよぉ。」

 

 

 

 

 

8/3

お母さんは
花をとっても
大切にしていましたね

一日がゆっくりと
眠りについていく頃
花瓶の中に入っている
一本一本の
花の茎を
タオルでやさしく
ぬぐってあげていましたね

そんな時
花たちは
みんな最高の
笑顔になって
ニコニコになって
ありがとうって
微笑んでいましたね

今も
お母さんは
花とお話しを
しているんでしょうか

見渡す限り
どこまでも
どこまでも
やさしい色の花が
広がっている所で

痛かったことも
苦しかったことも
生きるということは
辛いことしかないということを
忘れさせてくれるぐらい

やさしい花たちに
囲まれて
微笑んでいるのですか

 

 

 

 

 

 

8/2
やさしい手の平

遠足の朝早く
お母さんは
おにぎりを
作ってくれましたね

やさしい手の平で
にぎってくれた
あのおにぎりは
とっても
おいしかったです

微かに香る
お母さんの
手の平の
香り

僕は今でも
ふと
感じる時が
あります

そうです
あの春のそよ風の
香りです

遠足の時
僕はおにぎりを
一個落としてしまいました
僕は悲しかった
せっかくにぎってもらった
おにぎりだったから
とっても悲しかった

お母さん
芝生が
くっついてしまった
あのおにぎりは
アリん子たちの
ごはんに
なったのでしょうかね

家族みんなの
お昼ごはんに
なったのでしょうかね
それとも
晩ごはんに
なったのでしょうかね

食卓を囲んで
わいわい
わいわい
食べたのかもしれませんね

わいわい

わいわい

家族みんなで
楽しそうに
食べたのかもしれませんね

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

8/1
みかん

おかっぱ頭に
林檎みたいな
まっ赤なほっぺをさせて
くりくりまなこを
キョロキョロさせながら

大曲から
集団就職で
上野の駅に
降り立った
お母さんの夢は
何だったのですか

大きなバックと
残りは東京に着いてから
食べようと
大切にとって置いた
赤い網に入った
冷凍みかんを抱えながら

右のポッケには
不安が入って
左のポッケには
入りきれないほどの
夢を
いっぱい
いっぱい
詰め込んで

お母さんは
上野の駅に
降り立ったのですね

お母さん
いまでも
上野の駅には
冷凍みかんがあるんですよ

だから
僕は
みかんが
大好きです

みかんは
お母さんの
夢だったからです

そして
お母さんは
この世で唯一の
僕の
みかんだったのです

僕は
みかんを
失ってしまいました

たった一個の
大切なみかんは
もう二度と
戻って来ません

誰にでも
大切な
みかんがあります
でも
生きていくって
そのみかんと
別れていくことでは
ないでしょうか

お母さんも
みかんを
求めていたのですね

自分だけの
大切な
大切な
みかんを
求めていたのですね

         義明