さらば青春の日よ・・・・
二・三日前から
やけに胸騒ぎがしていた
うれしさで
興奮しているのだろう
きっとそうなんだろうと
想っていた
友から
あの話しを聞くまでは・・・・
友はいつものように
夜中にやって来た
十六の夏から行っている
あの海に向かうために
だがその夜
友は遠方に旅立つことを告げた・・・・
その瞬間から
今回の海が
特別な意味を持ち出した
全ての瞬間が輝きだし
全ての一瞬一瞬を
胸に刻み込みたいと想った
全然仮眠もできなかった
それより早く
海へ海へと
向かいたかった
日はまだ
昇っていなかったが
眠たそうな友を起こし
僕らは
バックミラーなど振り返らずに
海に向かった
僕らはいつも
ただ海に向かうだけではなかった
一本のロードムービーを
心のフィルムに焼き付けていた
もう何十缶にもなっている
ココロのロードムービー
田んぼの中を
真っ直ぐに走る
単線と平行して走ったり
誰もいない無人駅で
一年間の成長を
素敵な駅舎に示すように
おのおのが駅を舞台にした
名作映画の主人公になったつもりになって
演技したり
田んぼの中をむじゃきに走り回ったり
かかしになったり
カエルをとったり
小さな洞窟を探検したり
僕らは
海に近づけば
近づくほど
ゆっくりゆっくり
少年へと戻っていった・・・・
海は
なにも変わっていなかった
ただ海を眺める瞳は
いつもより
遠くを眺めていた
地平線のその先にある
おのおのが進む
別々の航路を探すように・・・・
僕らの呼吸は
完全に合っていた
同じ波にこんなにも
同時に乗っているのは初めてだった
二人は波の上で
顔を見合わせていた
その瞬間
昔の想い出が洪水のように
フラッシュバックしていった
無垢な二つの心を乗せた
この波が永遠に感じた
今日はこのまま
気力が折れるまで
ぶっ倒れるまで
波と一つになっていたいと
心に誓った
想い残すことなく
海と友と一つになれた
夕日は
いつもより
哀しそうに写り
田んぼの裏山から聴こえてくる
蝉しぐれが
余計にせきりょう感を感じさせた
いつもの
らーめん屋の
みそラーメンが
胃袋よりも
心に染みた
渋滞があったのか
なかったのか
憶えてないほど
あっけなく家に着いてしまった
これが永遠の
別れになるかもしれないのに
僕らは
またすぐ会うように
いつもの
別れ方をした
「じゃぁね。」
子供が終わった日は憶えてない
だが小さくなっていく
友の車の赤いテールランプを眺めながら
今日が
青春が終わった日だと想った
さらば
青春の日よ・・・・
さらば
我が友よ・・・・・
僕らは
大人になっていった・・・・
義明
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