命
僕が愛する
千葉の海岸は
神奈川はおろか
千葉の中でも一番美しい
白い砂をした海岸で
透明度も高く
波も高く
風景も美しい
理想的な海岸である
海は
サーフエリアと
海水浴のエリアが
ロープとブイで分かれていて
その日は
7月12日の
海開きの日だった
そして
波のうねりが
強い日だった
海開きの日と
真夏日が重なって
海では多くの
小さな子供たちが
楽しそうに
むじゃきに
遊んでいた
その中の
小学校1年生ぐらいの女の子と
その弟らしき
二人の子供が
ロープエリアで
浮き輪に身体を通すのではなく
片手で浮き輪につかまって
海に浮かんでいた
そのエリアは
海岸から沖へと引っ張る
海流が極端に強いエリアで
しかも海面からは見えないが
遠浅の海岸が急に深くなる
地形になっていて
足を強引に引っ張り込もうとする
うねりが強い
この海で一番危険な
魔のエリアである
22年間も
この海で戦っていれば
そこら辺の
ローカルよりも
海の海流や
地形に詳しくなっている
僕と
その子たちの距離は
5メートルぐらい
離れていたが
僕は直感的に思った
【今この瞬間に行かなきゃ一生後悔する】
そう思った瞬間
ボードがつながったまま
その子たちの方向に
向かっていた
ライフセイバーを
振り向く余裕も
頼る気持ちもなかった
そして
その瞬間
予想以上の大きな波が
女の子をさらっていった
やばいと思った
女の子は
浮き輪に身体を通していなかったので
パニック状態になり
両腕をバタバタさせ
しかもいきなり
深くなっているので
顔面蒼白で
もがき
溺れだした
僕はとっさに
海に潜り
女の子を助け出し
女の子の身体を浮き輪に通し
浮き輪の周りにくっついてる
ひもをつかんで
海岸まで
引っ張っていった
一つの
命が
見えた
そして
一つの
命が
光っているのを感じた
瞬間だった
【今この瞬間に行かなきゃ一生後悔する】
脳裏にその信号が
電気のように流れた瞬間は
女の子はまだ溺れていなかったが
なぜだかそう想った
しかしこう想うことは
僕だけでなく
誰にでもあると思う
僕の場合は海だったが
日常生活でも
こういう場合はある
自殺を考えている人は
その前に
必ずサインを発します
身内の人や
親しい人が
なんとなく
やばいと想ったら
仕事や
日常生活が忙しいし
めんどくさいから
気のせいにして
無視するのではなく
取り越し苦労なら
後で笑い話しで終わるから
どうか
おせっかいになって下さい
あなたの
おせっかいが
人を救うのです
愛しい人の
この世に
一つしかない
命を救うのです
一生
後悔しないためにも
どうか
愛する人のために
想った瞬間に
飛び込んでください
義明
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